銀行員はお嫌いですか

緩く、弛く、ゆるく

中央銀行デジタル通貨を導入しても銀行は潰れなさそうということ

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2020年10月に銀行関係者にとっては非常に重要な発言及び方針発表が日銀からなされました。

日銀総裁の発言は以下の通りです。

中銀デジタル通貨「民間と共存」 日銀総裁
2020/10/12 日経新聞

日銀の黒田東彦総裁は12日、国際金融協会(IIF)がオンラインで開いた年次総会に参加した。中央銀行のデジタル通貨(CBDC)発行の可能性に言及し、「民間の決済サービス事業者を置き換えたり排除したりするものではない」との考えを示した。中銀が民間金融機関に通貨を供給し、民間が企業や消費者に決済サービスを提供する「2層構造を維持すべきだ」と述べた。

黒田総裁は「CBDCと民間セクター(の発行するデジタル通貨など)は共存すべきだ」と指摘した。(以下略)

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64910160S0A011C2EE8000/

この発言は、一般的には大したことは無いと思われるのではないでしょうか。

しかし、銀行関係者にとっては非常に重要なことなのです。

以下は上述の2層構造を表した図です。

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(出所 日銀「中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み方針」の公表について)
中央銀行デジタル通貨(CBDC)が導入されたとしても、中央銀行と企業・個人の間に金融機関が入っています。

中央銀行と企業・個人は直接取引ができない形になっているのが2層構造もしくは間接型と呼ばれる仕組みです。

今回、日銀は、CBDC導入をするならば、この2層構造、もしくは間接型の仕組みが良いと方針を表明しました。これは銀行業界にとっては救いの手とも言えます。

CBDC導入に際して、企業や我々個人が中央銀行(日本の場合は日銀)に直接口座を持つことができるようにする方策・選択肢もあります。日銀に預けていれば国家が破綻しない限りは安全です。心配性の人や面倒くさがりの人は、給料の受取口座を日銀の口座にするでしょう。民間の銀行に預けるのは、預金金利を大きく付与してもらう時ぐらいです。これを企業も同じように行動するとすれば、どうなるでしょうか。

民間の銀行は、おカネを貸し、そのおカネを預金として一部預け入れてもらい、それを元手にまた貸出を行うという「信用創造」によって世の中におカネを供給しています。

この銀行の重要な機能が、日銀に口座を直接開設する方法だと、働きにくくなるのです。これは、世の中に回るおカネが減少するという観点で、世の中のためになりません。

すなわち、日銀に直接口座開設を行う方式は、裏を返せば、銀行の存在意義を減少させる方向に動く可能性があるのです。

日銀の今回の方針はそれを回避したということになるでしょう。

 

尚、以下は中央銀行デジタル通貨、CBDCに関する本です。ご興味ある方は良いかもしれません。