コロナ禍の中で、資金繰りに窮している企業は多いでしょう。
新型コロナ感染症が実体経済に影響を与えるようになってから、金融庁は「金融機関における貸付条件の変更等の状況について」という資料を開示しています。
要は、困った企業からの貸出期限の変更や約定している分割返済額の変更等について金融機関がどの程度応じているかを公表することで、銀行に借入人(債務者)を保護せよと迫っているということです(少し言い過ぎかもしれませんが)。
以下の資料は2020年8月17日に公表されたものであり、2020年3月10日~2020年6月末までの貸付条件の変更等について集計したものです。
(出所 金融庁Webサイト)
この資料で私がお伝えしたいのは、銀行が頑張っているとか、貸出条件変更の申し出が多いもしくは少ない、ということではありません。
この資料を見ると分かるように、債務者(借入人)から貸出条件の変更を申し出た場合には、ほぼ100%に近い確率で銀行が応諾するということです。
債務者保護という名の下、債務者は保護されていることになります。
銀行は立場が強く、債務者は立場が弱いと考えるのが一般的でしょう。
しかし、既に借りてしまった債務者に対して、銀行は立場が弱いというのが正確な理解のように私は思います。
もちろん、担保を取っていたり、保証を取っていたりしますので、最終的には銀行が権利を行使すれば債務者は「困ること」になるでしょう。しかし、銀行が権利を行使するまでにはかなり時間がかかるということになるのです(例えば、借入期限の延長がなされれば、期限が到来するまでは担保権の実行は出来ません)。
すなわち、今の時代は完全に債務者優位なのです。
これは既にお金を借りている債務者にとっては良いことでしょう。
一方で、新たにお金を借りたい企業や個人にとっては厳しい環境かもしれません。銀行は一度貸出をしてしまえば簡単にはお金を返してもらえないことを知っています。だからこそ、入口を厳しくするのです。
日本でなかなか資金が回らないのは、このような銀行に対する金融庁の動きもあるものと私は思います(もちろん、それだけではなく事業に対する知見を銀行が持っていないことが根本的な問題のようには思いますが)。