中部圏社会経済研究所(中部社研)が「新型コロナウイルス感染症が全国・中部圏の産業別の雇用に与える影響について」の調査レポートを発表しました。
http://www.criser.jp/bunnseki/documents/26_report_Coronavirus-Part3_2020.05.20.pdf
このレポートでは、コロナの影響でどの程度の数の失業者が増加するかを推計しています。
就業者の弾性値
まず、以下の実質国内総生産に対する各産業の就業者数の弾性値については、国内総生産が年間で1%変化した際に各産業の就業者数が何%変化するのかを中部社研が推定したものが以下の図表になります。
(出所 中部圏社会経済研究所「中部社研 経済レポート No.26」 2020年5月20日)
やはり、宿泊・飲食サービス業の弾性値が高い=GDPの増減に影響を大きく受けることになります。
その上で、中部社研は2つのシナリオで就業者の減少数・率を推定しています。
標準ケース(シナリオ1)はコロナの影響で▲52兆円の国内総生産の減少となり、その率は▲9.7%です。
また、リスクケース(シナリオ2)は▲85兆円の国内総生産の減少となり、その率は▲15.8%です。
シナリオ1
上記のシナリオ1が以下の通りとなります。
(出所 中部圏社会経済研究所「中部社研 経済レポート No.26」 2020年5月20日)
「シナリオ1(標準ケース)」では、減少する就業者数は▲185.5 万人、2019年度就業者数と比較した減少率は▲2.8% と試算されています。
産業別で減少数が多いのは、卸売・小売業(▲ 52.0 万人)、製造業(▲ 37.8 万人)、宿泊・飲食サービス業(▲ 36.2 万人)です。減少率では宿泊・飲食サービス業の▲ 8.7% が大きくなります。
シナリオ2
(出所 中部圏社会経済研究所「中部社研 経済レポート No.26」 2020年5月20日)
「シナリオ2( リスク ケース)」では、減少する就業者数は▲ 301.5 万人、減少率は▲ 4.5% と試算されています。
産業別で減少数が多いのは、卸売・小売業(▲ 84.5 万人)、製造業(▲ 61.4 万人)、宿泊・飲食サービス業(▲ 58.9 万人)です。
減少率では宿泊・飲食サービス業の▲ 14.1% が大きくなっています。
所見
コロナの影響は様々な産業に及びます。
ベースのシナリオでも185万人の失業者が出るということであり、既存の失業者数176万人(2020年3月労働力調査)と合わせると361万人となります。
就業者数は6,700万人ですので、失業率は5.4%となる予想です。
2020年3月の完全失業率(季節調整値)は2.5%ですので、倍以上に跳ね上がるということになります。
一方で、米国は失業率が14.7%です。アメリカ議会の予算局は、2020年4月に記録した第2次世界大戦以降、最悪となる14%台の失業率がこの夏にかけてさらに悪化するという予測を公表しているほどです。
2020年3月のEU27カ国全体とユーロ圏19カ国の失業率(季節調整済み)は、前月からともに0.1ポイント悪化し、それぞれ6.6%、7.4%となっています。
それに比ベると日本は失業率は低いと言えるでしょう。
これは日本の解雇規制が厳しいということの裏返しではないかと思います。
解雇規制が厳しい=転職市場が発展していかないことは、日本人の給与水準を「低く」保つ効果があるという弊害を生んでいるとは思いますが、一方でこのような危機の時にはショックをある程度吸収する役割も果たしているということでしょう。