GW中に(ある意味で)最も驚いたニュースは、銀行が大企業病を治療してくれるという記事です。
冗談かと思いましたが、以下のような記事です。
「大企業病」治療を指南 三菱UFJ信託銀が新会社
2020/05/02 日経新聞三菱UFJ信託銀行は4月、上場企業などにコーポレートガバナンス(企業統治)を総合的に指南する新会社を設立した。10月から業務を始める。銀行本体で提供してきたサービスを拡充し、3年後に顧客を700社以上に倍増させる。銀行がこうしたサービスを切り出すのは異例。社長に就いた内ケ崎茂氏に設立の狙いなどを聞いた。
新会社は「HRガバナンス・リーダーズ」(東京・千代田)で、三菱UFJ信託銀が9億8000万円を全額出資する。業務開始時の従業員は約60人の見込みで、うち約50人をガバナンスに精通するコンサルタントが占める見通し。
「私は、六法全書を出版する有斐閣(東京・千代田)などを経て2008年に三菱UFJ信託銀に転じて以来、コンサルタントとして日本企業のガバナンス改革に取り組んできた。長期的な経営を促すため、株式を役員報酬に組み入れることなどを提案してきた」
「銀行のコンサル部門として300社以上の顧客を得た。今後は企業の指名・報酬などガバナンス実務への関与を強めるため、銀行でも機関投資家でもない、独立した専門家の立場で助言する必要があると考えた。銀行とは異なる社風や人事制度を整える狙いもある」
新会社は、コンサルタント3人程度をチームとして顧客に派遣し、社長や役員にアドバイスする。指名、報酬、(次期経営者を育てる)人事など経営委員会の人選や運営にも有識者として参画し、関与する。
「他のコンサル事業者は、社外取締役候補者の紹介、次期経営者の教育、報酬制度の提案といったサービスを個別に提供するが、当社は報酬、指名・人事、(ビジョン策定などの)サステナビリティー、ガバナンス構築という4つの軸を総合的に手掛ける。ガバナンス構築とは、取締役会や各委員会の実効性向上、国内外グループ会社の管理といった実務の支援だ」
「ガバナンス改革は時間がかかる。一般的なコンサルは数カ月~半年程度の業務を回転させるビジネスだが、当社のコンサルは数年~10年、顧客と深く・長く・濃い関係を築き、提供する」
15年のコーポレートガバナンス・コード登場で上場会社に社外取締役こそ普及したものの、形だけ整えて、事実上は旧態依然の内向き経営を続ける企業も多い。
「日本経済をけん引してきた歴史ある企業の多くが『大企業病』にかかり、変化に対応できなくなっている。大企業病を治すためにはガバナンス改革が欠かせないが、社内関係者だけで取り組むのは難しい」
「我々は顧客の『かかりつけ医』として、経営陣へのインタビューや従業員アンケートを通じて初期診断を実施する。その上で一過性の外科手術ではなく、『漢方薬』のように内部から効き、大企業病を治してゆく解決案を提示する」
「欧米発のガバナンス改革は『監督(社外取締役)と執行(経営陣)の分離』を促した。我々は分離した監督と執行を再び結びつけたい。具体的には指名、報酬、監査に加え、人材開発、サステナビリティー、企業文化、エンゲージメント、イノベーションといった多彩な委員会を設け、委員会を介して社外取と経営陣を『ワン・チーム』として、社会の要請や企業の成長に貢献してもらう。これこそ日本らしいガバナンス改革だと思う」
(聞き手は編集委員 渋谷高弘)
冷静に読めば、信託銀行が目指しているのは、監督と執行に一つの横串を通すということのようです。そして、大企業病を漢方薬のように治すのです。
銀行がここまでやるのはすごいことだと思いますし、純粋に面白い試みだと思います。
その上で、私が感じたことは「これを銀行がやるのは、恐ろしいほどの冗談のようなものだ」ということでした。
新会社を立ち上げてやる事業なので、コンサルタントとして働く銀行員は少ないのかもしれません。
しかし、銀行こそが大企業病の巣窟のような組織です。どんなに良いことをアドバイスしたとしても「君(銀行)には言われたくない」と相手が思ったら効果はないでしょう。そして、少なくともこの新会社をコントロールするのは銀行です。大企業病の銀行がコントロールするのです。まずは、この新会社こそ大企業にかからないように仕組みを構築する必要があります。
私は銀行が新サービスを開始する際には、ぜひ成功して欲しいとは思います。しかし、このサービス(コンサル)については、良く分かりません。ただ、興味深いとは思います。5年後にどうなっているのか期待したいと思います。